平成26年度日本学校図書館学会 学校図書館フォーラム

テーマ

子どもの確かな学びを支える学校図書館
―学校司書の養成カリキュラムや研修プログラムをどのように考えるか―

日時・会場

 日 時 平成27年2月7日
 会 場 帝京科学大学

小川哲男会長挨拶

symposist  昨年学校司書が法制化され、私どもの学会はそのための学校司書の養成の在り方や研修の在り方についての研究会を立ち上げ、学校司書の養成プログラムをどう作るのか、また、実際に進められている学校司書の研修プログラムをどう考えるのかという二つの課題を掲げ、研究を進め、このほど中間まとめを行いました。今回のフォーラムでは皆様のご意見やご提案をいただき最終の報告書のまとめをしたいと考えています。  この学会は、教育実践学としての学校図書館づくりを目指しています。子どものための学校図書館づくりをどう考えるのか、それは学校図書館を活用した授業づくりをどう考えればよいのかということになります。学校図書館づくりと授業づくりは車の両輪ということが私どもの基本的立場です。  最後の到達点は、授業づくり、学校図書館づくりのために、学校司書の方、司書教諭の方そして学級担任の方がそれぞれのお立場、それぞれの専門性を活かして協力しつつ協働しつつどう考えていくかが私どもの新しい授業づくりに取り組むかということになり、それは我が日本学校図書館学会の使命であり、責任であり独自性でもあります。どうぞよろしくお願いいたします。

基調講演
「子どもの読書活動に果たす学校図書館の役割」
文部科学省初等中等教育局児童生徒課長 内藤敏也氏

 ご紹介いただきました文部科学省初等中等教育局児童生徒課長の内藤です。
 お集まりいただいている皆様方には日頃よりご協力いただいていることを学校図書館を担当する課長として深く御礼を申し上げます。
 昨年からこの学会に出させていただいていますが、昨年は未曾有の大雪の日で、出席の方々の人数も本日の半分以下だったのですが、その中でも熱心な方がいらっしゃって、その後の法律改正を行う上で、このフォーラムが一つの弾みになったのかなと思っています。本日もこういう機会を与えていただいて感謝をしています。
 私が本日お話するのは、「学校図書館法」で昨年、学校司書が法制化されましたが、なぜそのようになったかということについてです。お集まりの皆様には、学校図書館の意義とか必要性とか、何のための学校図書館なのか、学校図書館の役割というのは何なのか、いろいろ関心がおありかと思いますが、それに先立ち、まず「学力」についてお話を申し上げます。
 学力には「確かな学力」と「豊かな人間性」、「健やかな体」とありますが、その三つの中で、少なくとも「豊かな人間性」に学校図書館では、力が入りがちになっているのかなということと、また教育委員会に熱心ではない方々や学校の先生の中でも学校図書館を認識していただくには「確かな学力」というスイッチが有効だと思いますので、まず「学力」に関することから説明をさせていただきます。
 「読書活動の重要性について」という調査によりますと、「読書は好きですか」という設問と国語Bの正答率で、正答率の低い生徒との間に相関関係が見られます。それから「朝の読書」を設けている学校とそうでない学校でも相関関係が見られます。また、おもしろいのは保護者の関与と学力の関係です。保護者がどういう関与を行った子が学力が上がるのかを見ますと、学習に対して直接働きかけることよりも、読書活動として「本を読みなさい」と言った方が、学力でいいデータが出ているような内容になっています。本を読ませるということは、それ自体で自己完結する話ではなくて、いろいろな影響を与えて学校で読書活動を入れなければいけないということを認識していただきたくて、いつもここから話をしています。
 子どもたちの学力についてですが、いわゆる「PISAショック」で、日本の子どもたちの学力について、特に読解力が国際的にもあまり高くないということで、現行の学習指導要領の改訂の際に影響をもたらしたという状況がございます。学習指導要領のポイントで「読書の指導」について「言語活動」ということを言葉にして今回の改訂の中で力を入れています。そしてこれに「学校図書館」に関連付けたことを多くいれています。昨年、「学校司書の資質能力の向上」という報告書が出ましたが、この報告書を基に「学校図書館法」の改正の流れができたと言えます。
 それを行うに当たって改めて学校図書館の役割を整理させていただきました。三つの役割「読書センター」「学習センター」「情報センター」に分けて位置付けをしました。今後、学校司書の専門性を議論する際も、この三つのセンターとしての役割が軸になるのではないかと思っています。「読書センター」としての役割は、読書好きな子を増やし確かな学力を育てる。「学習センター」は、授業で資料や新聞を利活用して思考力・判断力・表現力を育む。「情報センター」は探究的な学習活動を行い、子どもの情報活用能力を育む。そしてさらにこの三つの役割を進めていく上で重要なことは、学校図書館の豊富な蔵書・資料を先生方ご自身が授業を展開する際に有効活用し役立てていくということです。
 「学校図書館」には様々な業務がありますが、その一つ一つの業務の充実を図る上で、蔵書と人材の相互の充実が必要です。そこで学校司書の人材配置ということが必要になってきました。司書教諭につきましては、それまで学校図書館法で明記されていましたが、昨年の改正前までは、学校司書については立ち遅れていたというような状況でした。そこで学校図書館法の改正が平成26年6月に成立し、施行は今年の4月から行われることになりました。
 学校図書館図書標準の達成状況ですが、毎年少しずつ伸びてはいますが、まだまだ小学校でも60パーセントに満たないという状況です。そこで学校司書の法制化に動いたわけです。
 いろいろな所で法改正の説明するに当たって司書教諭と学校司書の違いを多くの方々に説明を求められました。司書教諭は、学校図書館の専門的職務を掌るということですが、これは、教員という専門性がベースにある訳です。教育活動の企画実施という所が中心になります。
 一方、学校司書は図書館資料の管理という所が専門性の中心になっているのですが、その他に学校図書館を活用した教科指導に関する支援にも当然関わるというところです。この辺りは、各学校によっても役割が少しずつ違うのではないかと思っています。
 ここまでは学校図書館法改正の理由等の話をさせていただきましたが、ここからは昨年成立しました学校図書館法の内容に少し触れます。第6条に、「学校には、前条第一項の司書教諭の他、学校図書館の運営の改善及び向上を図り、児童または生徒及び教員による学校図書館の利用の一層の促進に資するため、専ら学校図書館の職務に従事する職員(次項において「学校司書」という。)を置くように努めなければならない。」とあります。
 学校司書をなぜ置くのか、手が足りないから置くのではなくてある程度専門性が必要だから置くという意味があるので、言葉としても「学校司書」が明確に出てきた訳です。そして学校司書の専門性については「附則」に書かれています。「国は、学校司書の職務の内容が専門的知識及び技能を必要とするものであることに鑑み、この法律の施行後速やかに、新法の施行の状況等を勘案して学校司書としての資格の在り方、その養成の在り方等について検討を行い、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとする」と学校司書の専門性を強調しています。しかし、専門性を言うためには何が専門性なのか、そこについては今後検討することになっています。
 学校司書が一定の専門性をもって学校現場により良く展開してもらうために良い方法はどういうことなのかを考えなければいけないと思います。そのため、学校司書の養成に関する協力者会議や全国の協議会も設けることも考えています。
 私にいただいた時間がきましたので、基調講演を終わらせていただきます。ありがとうございました。

「学校司書の資格、養成・研修等の在り方に関する研究会」からの報告

 本学会では、学校図書館法の改正に伴い、学校司書制度についての研究を始めた。以下は、平成26年8月16日から合計8回に及ぶ研究の中間まとめの概略である。

  1. はじめに
     学校図書館法の改正により、その法体系の中に位置付けられた学校司書制度は、学校図書館の在るべき姿を実現するための人的条件の整備として捉え、その資格や養成等の制度設計をすることにした。
  2. 学校司書の専門性
     学校司書の専門性としては、学校図書館として必要な管理業務に加えて各教科等の学習指導及び朝、休憩時間、放課後などにおける読書を支援するために必要な知識、技能、使命感などの資質能力が求められる。
  3. 学校司書の資格
     その専門性を担保することを主眼として構想することとするため、学校司書の資格を取得した者だけがその職に就くことができるクローズな制度とするのが理想的であるが、現状ではそのような資格を所持する者はいないので、当面は誰でもその職に就けるオープンな制度としなければならない。
  4. 司書教諭との関連
     司書教諭と学校司書とはその制度の趣旨が異なっているので、それぞれの職務の役割分担を明確にすべきであるという考え方もあるが、具体的に一線が画されているわけではないので、学校の実態に応じた柔軟な対応が求められる。
  5. 学校司書の養成
     学校図書館は、公共図書館のように独立した施設と異なり、学校の中にあって、学校の教育活動を支援する学校の一組織であることを考えると、学校司書の養成には司書制度とは異なる学校司書制度としての独自性のカリキュラムを構想する必要がある。
  6. 学校司書研修
     学校司書の資格を取得した者と取得してない者が任用された場合は、次の二つのタイプが考えられる。
    • ① 現実に進められている専門性を高めるための研修
    • ② ①を基本としつつ、教育課程の展開に寄与するという新たな視点を加えた研修
  7. 養成カリキュラムの構想
     養成カリキュラムの構想に当たってはその専門性と学校という場の特殊性から次の四つの観点によることが重要である。
    • ① 学校司書は学校組織の一員としてその教育にかかわるための資質能力が求められること。
    • ② 学校教育の各教科等の学習指導や教育課程外の読書指導の支援ができること。
    • ③ 児童生徒の教育にかかわるため豊かな教養を身につけること。
    • ④ 学校段階や学校の種別によって実態が様々に異なっているため、それに対応できる内容を選択できるようにする必要があること。
  8. カリキュラムの内容
     概ね次のような科目が必要となる。
    • ① 学校教育に関する科目
    • ② 学校図書館に関する科目
    • ③ 教養に関する科目
    • ④ 学校図書館に関わる選択科目
     ※資格を取得するための単位数としては、学校司書第一種資格として56単位程度、学校司書第二種資格として42単位程度を考えた。
  9. 養成カリキュラムの構成
     何よりも児童生徒の読書活動の推進と学校図書館利活用の活性化に資する学校司書としての実践力を高める内容が求められる。そのため、次の4点の視点が必要になる。
    • ① 学校教育にかかわる法令及び学校の実態を知る教科
    • ② 児童生徒理解のための教科
    • ③ 図書館資料の活用法情報活用能力の育成に関わる教科
    • ④ 読書活動推進に関する知識理解に関する教科

学校司書にかかわる論点整理
昭和女子大学特任教授 大串夏身

議論の内容と方向について大きく次の4点から整理した。

  • ① 学校図書館の機能には、読書センター、学習センター、情報センターという三つの機能があること。学校司書はそのための職務を行う。
  • ② 学校司書の専門職としての位置付けには次の要件が必要であること。
    • 社会的に認知されること。
    • 専門職として処遇されること。
    • 専門職としての養成研修が必要なこと。
    • 資格を取得できるための条件が明らかなこと。
  • ③ 学校司書という専門職の制度化が求められること。
  • ④ 支援組織の充実が必要であること。学校司書は一人で勤務する職務になる。そのため相談したり、研修を受けたりという支援組織が必要になる。

シンポジウム

 パートⅠ(前半)では、各シンポジストの立場から学校司書に関することについて提言があった。パートⅡ(後半)では、会場の方々から質問や意見・要望等を受け、それに基づいて各シンポジストの方々からの発言要旨は次の通りである。

シンポジストのみなさん

文部科学省初等中等教育局児童生徒課長 内藤 敏也 氏
昭和女子大学特任教授 大串 夏身 氏
大田区立久原小学校校長 岡村 克志 氏
荒川区立第一日暮里小学校学校司書 相澤めぐみ 氏
コーディネーター 本学会会長 小川 哲男

パートⅠ(前半)

―小川
 それではシンポジウムパートⅠを始めます。各シンポジストの皆様のご発言の内容ですが、次のようなことを中心にお願いします。
 内藤課長さんからは、基調講演をしていただきましたので、補足のところや、ただいま本学会からの研究報告がありましたので、それに関わるご意見をお願いします。
 大串先生からは、学校司書育成に関わるカリキュラムに関してコメントをいただければと思っています。
 岡村校長先生からは、学校経営の視点から学校司書のこと、組織作り等をお願いします。
 相澤先生からは、学校司書として授業づくりに関わる指導案の検討にも関わっていらっしゃるので、そのことについてのお話をお願いします。
 それではよろしくお願いします。

―内藤
 今回の改正で学校司書の資格の在り方、養成の在り方について、これから「調査研究協力者会議」で議論して行こうと思っています。では今何をやっているのかと申しますと、全国の市町村教育委員会のご協力をいただきながら、実際に学校司書として配属されている方々が、資格の有無も含めてどういう資格を持っているのかなどの調査を行っています。その際に重要だと思っている3点を挙げさせていただきます。それは、職務の内容、資質向上に関わる資格の内容、そのための前提となる資格にはどういうものが必要なのかを調査しているところです。

―大串
 学校司書養成のカリキュラムについて先ほどの話にプラスして話します。学校司書というのは、学校図書館という専門図書館という中にいますので、学校教育にかかわる事柄について身につけていただく、例えば、教育心理学や教科教育に関わる科目理解を深めていただくことが必要かと思います。具体的には「教材研究に関わる科目」や「学校図書館のメディアに関する科目」なども先生方と連携できるということからも重要かと思います。

―岡村
 全国の小中学校または高等学校の各校長会が学校図書館法の改正に当たって学校図書館議員連盟に次のようなことを要望しています。
「学校図書館の運営や児童生徒の学習支援に携わることのできる学校図書館担当職員(学校司書)の充実が重要である…中略…資質向上のため学校司書を対象とした研修が重要である。」
このことについては、地区によっては先進的に進めている所もあればそうでない所もあります。また校長で十分理解している方もいれば、そうでない方もいらっしゃいます。そのことが課題になっています。そして学校司書に期待することはまず、子どもの気持がよく分かる人、これは教師はもちろん、大人全員が忘れてしまっていることなのですけれども…。

―相澤
 私の勤務校のことについてお話をします。教員が考える授業のねらいを私どもも十分に共通理解することが必要と考えています。また児童の学習の理解は多様ですので、単に、ねらいを知るだけでなく、学校生活の中で児童一人一人を知り理解することが授業に繋がると感じています。

パートⅡ(後半)

パートⅡでは、会場の方々から、学校司書の資格取得単位についての要望や質問、地域の違いによる司書教諭や学校司書の実態等について意見等が出された。それを受けて各シンポジストの先生方から改めてお話をうかがった。

―内藤
 学校図書館の改革というのは、文部科学省初等中等教育局全体で今考えていることと無縁ではいられない状況です。「生きる力」に基づいて言語能力、さらには汎用的能力を身に付けさせる上で学校図書館の活用が重要です。
 管理職が学校図書館について関心が薄いという話がありましたが、学校の先生というのは教育に有効だと思えば、学校図書館を使っていただけるものだと信じています。ですから、本日のような議論の中で学校図書館を位置付けて発信していくことが必要なのではないでしょうか。

―大串
 学校司書の資格取得の本学会の研究報告書の中では、多種の単位の取得の必要性をうたっていますが、学校司書の重要性を踏まえ、現実とは別に、できるだけ理想の姿を追ってみようとお示ししました。

―岡村
 学校司書が経験等を積みながら力を高めていくことを考えた時、校長の手腕やリーダーシップにかかることは当然です。ということは、校長がその中身を知っていなければならない、司書の役割、学校司書導入の意味等を正しく理解しておくことが必要です。そのための校長研修も必要だと考えています。
 また、学校司書自身の位置付けを確立するためにも、その養成課程や研修が必要で、その後のキャリアアップによって学校司書のステータスも上がってくれば、学校での認知度も高くなると言えます。まず最初に資格や研修等の形を作ることも大事かなと思います。

―相澤
 授業において教員とどのように関わるかということの中で、学校司書である私は、資料の所在や内容に関する問い合わせに対応できるようにしています。また、学習のねらいを達成するための意識は教員の方と対等でいるつもりでいます。
 学校司書としての研修などの研鑽を積んでいくことだけでなく、学校司書が成長できるのは学校現場での経験を積むということが大事なことです。その中で学校司書のやりがいや責任を感じつつ学校司書としての在り方を模索し学校教育に貢献していきたいと思います。

―小川
 学校司書の現状や今後のことについての理想と現実の貴重なお話が続きました。学校司書の方の専門性やその人の良さを活かしながら、協力・協働の学校づくりをしていく、そのことがより良い授業づくりに繋がっていくということが共通理解できたように思います。シンポジストの皆様、会場の皆様、本日は誠にありがとうございました。

Copyright(c) 2002 日本学校図書館学会 All Rights Reserved.