平成28年度日本学校図書館学会 学校図書館フォーラム

テーマ

これからの時代に求められる資質・能力の育成と学校図書館
―文部科学省『これからの学校図書館の整備充実について』を読み解く―

日時・会場

 日 時 平成29年2月4日
 会 場 帝京科学大学

基調講演
「これからの学校図書館の整備充実について」の策定にあたって
文部科学省初等中等教育局
児童生徒課課長補佐 佐野 壽則氏

■はじめに
 児童生徒課にこの1月から着任したばかりだが、以前平成18年頃同じ児童生徒課にいたことがある。その時に第三次学校図書館図書整備五か年計画の策定に携わった。

■学校図書館の役割について
 読書活動の重要性は、平成13年の「子どもの読書活動の推進に関する法律」において、子供が、言葉を学び、感性を磨き、表現力を高め、想像力を豊かなものにし、人生をより深く生きる力を身に付けていく上で欠くことのできないものとされている。また、平成28年度の全国学力学習状況調査の正答率と読書活動との相関関係を見ると、読書の好き嫌いと学力に相関関係があるという研究結果が報告されている。学校図書館には、読書活動の拠点となる「読書センター」、授業に役立つ資料を備え学習支援を行う学習センター」、情報活用能力を育む「情報センター」、の三つの役割がある。この役割を果たすことで、読書好きの子どもを増やしたり、授業で蔵書や新聞を活用したり、探究的な学習活動を行って情報活用能力を育んだり、教員の指導力を高めたり、子どもの居場所にしたりすることが期待される。特に近年、「学習センター」「情報センター」の役割が注目されている。
 学習指導要領が今年度中に改訂される見込みである。中教審答申を踏まえて改訂されるが、その中では、例えば、学びを深めるために必要な資料の選択や情報の収集、教員の授業づくりや教材準備などを支える学校図書館に期待が高まっているとされている。また、国語に関して、子供の資質や能力の向上を図るためには、学校図書館の整備・充実などの条件整備が求められる等と記載されている。

■学校図書館の更なる充実に向けて
 昭和28年制定の学校図書館法第3条には、学校図書館の設置義務の規定がある。ただし、設置するだけでなく、蔵書・人材の双方の充実が求められる。これまで、図書や新聞等の整備と司書教諭と学校司書等の人材の配置、資質・能力の向上など、環境整備が着実に展開されてきた。財政措置では、蔵書について学校図書館図書標準が設定され、学級数に応じた冊数が策定されている。現状は、達成を目指して右肩上がりに整備されてきている。平成13年末には約3割だった達成率が現在では約六割に至っている。新聞の配備も予算措置がされており、小中学校において配備校及び配備紙数が増加している。人的整備では司書教諭は十二学級以上の学校に置くこととなっており、ほぼ百パーセントの配置となっている。学校司書についても増えてきている。
 平成28年6月の学校図書館法の改正で、学校司書の資格・養成の在り方について必要な措置を講ずるものとするといった内容の附則が規定された。その附則に基づいて、平成27年6月、「学校図書館の整備充実に関する調査研究協力者会議」が設置され、学校図書館の基本的視点や学校司書についての指針を得るための検討が行われた。その報告書に基づき、昨年11月、学校図書館ガイドライン、学校司書の資格・養成のためのモデルカリキュラムが示された。学校図書館ガイドラインでは、校長が学校図書館長としてリーダーシップを発揮することや学校図書館の評価などについて示された。モデルカリキュラムでは、大学や短期大学における学校司書の養成に必要な科目や単位数が示された。
 学校司書のモデルカリキュラムは大きく二つの柱がある。一つは学校図書館の運営・管理・サービスに関する科目として7科目、もう一つが児童生徒に対する教育支援に関する科目として3科目である。「学校図書館論」「学校図書館サービス論」「学校図書館情報サービス論」「学校教育概論」は学校司書独自の科目となっている。
 第5次の学校図書館図書整備等五か年計画の地方財政措置として、図書整備費に約千百億円、新聞配備費に約150億円、学校司書の配置拡充費に約千百億円が、各々配当された(金額は何れも五か年計)。学校司書の配置拡充費に関しては、1.5校に学校司書1名が配置できるような措置である。これによって、ガイドライン、モデルカリキュラム、5か年計画という3本の矢が揃ったことになる。

■未来の学校図書館のイメージ
 これまで、整備の進展がみられてきたが、今後もこれらを活用して推進を図りたい。未来の学校図書館として、①校長のリーダーシップによる学校図書館活用、②司書教諭作成による年間指導計画、➂複数紙ある新聞配置、④学校司書が毎日常駐している学校図書館、⑤児童生徒が一人になれる個室がある、といった機能を備えた学校図書館が造られたら良い。

シンポジウム

シンポジスト

堀川 照代氏 青山学院女子短期大学教授・文部科学省研究協力者会議座長
相澤めぐみ氏 荒川区立第六瑞光小学校学校司書
小川三和子氏 新宿区立教育センター・元新宿区立津久戸小学校司書教諭
髙橋 宏氏  荒川区学校図書館支援室室長・元荒川区立第五中学校長

コーディネーター

鎌田 和宏氏 本学会研究委員長・帝京大学教授  

内容

―コーディネーター
 今、文科省の佐野課長補佐様から施策の話があった。物的、人的の矢は放たれているが、この報告書について評価できること、課題となることをお話しいただきたい。

―小川
 司書教諭の立場から評価できる点を8点、課題となる点を3点お話しする。今回の報告書を全職員に知らせていくことが重要。ガイドラインにははっきりと校長のリーダーシップを発揮することが明示されている。新学習指導要領を踏まえ、教育課程に学校図書館の活用を進めるよう位置付けていかなければならない。これが一番重要だと思う。学校司書は学校教職員の一員として考えてほしい。教育的ニーズに応じた形態の図書館資料にも力を入れたい。選定や廃棄、更新についても明文化された。
 今回の報告書の問題は、「努める」という表現が多い点である。自治体間、学校間の格差が生じるのではないかと懸念がある。また、個人的には分散配架はあまり推奨したくない。それから評価の観点をよりわかりやすくしてほしいと思った。「アウトプット」「アウトカム」「インプット」などの用語はわかりにくいと感じる。
 学校司書が正規職員として採用になるのはいつなのか。特別支援学校教員の学校図書館利活用の理解、授業改善をいかに進めるか。学校の中にある図書館は本を借りる役割だけでなく、学校教育の場であることを広めていきたい。

―相澤
 荒川区の学校司書八年目である。荒川区は平成18年度、図書標準を達成している。21年度から全校に学校司書を配置した。荒川区では早い段階から学校図書館の充実、資料整備、人材の充実を図ってきた。今後は、さらに学校図書館の利活用を考えていく必要がある。その利活用の推進のために、司書教諭、学校司書の連携を模索してきた。この報告書は学校司書、司書教諭それぞれの立場の役割を理解し読み解いていくことが重要かと思う。学校司書は授業をする立場ではない。司書教諭が授業を展開するとともに、情報活用などを他の教員に推進していくように明言されている。ここが重要と考える。学校図書館の利活用を「組織的・計画的に」と示されているところが重要であり、計画的、組織的、継続的に学校図書館の利活用を実現していくことがいかに難しいかということも感じている。様々な計画の理解は、まだまだのところがある
 学校司書に求められることが変わってきたと感じている。着任当時は環境整備を中心に仕事をこなしてきたが、ここのところ読書活動の推進、そして学習の支援などと変化してきた。児童生徒の理解も当然だと思う。
 このようにたくさんのことを求められる中で、考えたいことは「読みたい」「知りたい」という児童生徒のことを念頭に、学校教育全体の問題として学校図書館の利活用を考えたい。

―髙橋
 元校長であり、今は支援室長の両方の立場で話すということは難しいが、話すことを絞って評価出来る点と課題を3点に絞って述べる。
 評価できる1点目は、校長を館長として位置付けたこと。それにより、学校図書館経営方針や運営計画などの作成は学校長が責任をもつこととなる。学校図書館の組織的計画的な運営体制をつくることや、学校図書館の評価に基づく運営改善をすることとなる。
 2点目は、各教科において利活用を求めた点である。すべての教員が、授業における学校図書館利活用の活性化をしていくことを強く求めている。校内研修会をすることやモデル授業の推進などがあること、学校司書の役割として、教育目標を達成するための「教育指導への支援」を明確に規定したことで、授業への関わりを積極的にもって欲しいと考える。
 3点目は、学校司書として、自ら雇用する職員を置く自治体促進に言及した点である。学校司書が週1日、2日の勤務では、なかなか学習に入り込むのは難しい。また、学校図書館支援センターを設置する自治体を増やす必要性に言及した点も評価できる。
 課題となる点として、教育委員会や管理職の意識改革があげられる。管理職への研修が必要であり、荒川区でも校長対象の研修会を行った。学校司書配置及び図書購入への大幅な財政的支援も大切である。
 学校の根幹に位置付けたい課題として、組織的・計画的な取り組みが未成熟であることがあげられる。どの学年のどの教科でどの内容を実施するのかがはっきりしていない。まさしくカリキュラム・マネジメントが必要である。学校図書館運営委員会の組織が未確立なため、学校図書館を活用した授業の研修体制が不十分である。
 課題の三点目は、学校司書の雇用を民間委託している点である。この形だと、学校司書を職員会議や校内研修に参加させにくいなどの支障が出てくる。

―堀川
 本日のフォーラムで、「ここまで踏み込んでいただけて」と言っていただき、ありがたく思っている。協力者会議では、委員さんや傍聴してくださった方の協力があり、文科省の事務局の方々は細かいことに気付き、記録してくださった。
 この報告書でもっと考えたいことがある。それは、司書教諭の役割だ。また、学校図書館の整備や学校司書活動のモデルも示したい。学校図書館には司書教諭と学校司書の二つの役割があり、それぞれの役割を明記していく必要がある。今回、司書教諭まで触れる時間がなかった。平成15年度司書教諭配置と共に、司書教諭の役割が明記されればよかったのだが。特に司書教諭の役割はきちんと示しておかないと情報リテラシー、情報活用能力の育成、学校図書館をカリキュラムに位置付けることなどを耳にしない司書教諭もいる。教科横断的にというが、学習指導要領への具体的な記述が無いので司書教諭の役割を明確にしていくことが必要である。
 学校図書館の充実度という点では、ガイドラインに沿って3段階程度に分けたチェックリストがあると良い。どの段階でどのような資料を用意したらよいのかを示すことができるとよい。
 また、「努める」という表現が多いという話があったが、3段階の具体的な目標としてあれば良いと思う。
 学校司書に求められるものが変わってきたのは学校図書館の成熟度が変わってきたからだと思う。最初は「資料の整備」など三段階ぐらいのチェックリストがあるとよい。
 文科省に是非お願いしたいこととして、平成14年までは学校図書館活用フォーラムがあり、全国3か所で2日間にわたっての研修会があった。昨年度、7、8年ぶりに校長や教育委員会の担当者を集めた研修会が再開された。各自治体ではどう研修をしたらよいかが分からないという状況があるので、研修会を計画的にできるようにしてほしい。横浜市では学校司書の研修のレベルを変えて、司書が選んだ研修に参加するシステムがある。是非演習を入れた研修をしてほしい。その情報が全国の自治体、教育委員会へ伝わっていってほしい。
 また、「学校図書館の手引き」は利活用が大切と考える。整備はできたが、利活用のガイドラインがないと活用は進まない。1987年には利活用の指導資料が作成されたが、それ以降作成されていない。学校図書館の指導資料がないと司書教諭はどう動いてよいかわからないので、ぜひ文科省で作成してほしい。

―コーディネーター
 それぞれの発表に関して補足や意見交換をしてほしい。

―堀川
 分散配架の件について。個人的には分散配架は望ましいとは思わないが、学級文庫を想定した配架と考えて記載した。

―小川
 学級文庫として、子どもの手に届く身近に置くことは大事だと思う。

―コーディネーター
 本館自体が無いか疎かにされ、分散だけにあるという問題もある。

―小川
 例えば、「動物の赤ちゃん」が一年生の教室にあると他の学年が使えない。そういうことを言いたかった。

―髙橋
 小学校と中学校とは違いがある。司書教諭が他の主任と兼ねており実質の図書担当は初任者であったという事例がある。図書館の担当者は学校図書館がよくわからない人という実態は、大きな課題だと思う。

―相澤
 荒川区では環境整備の面で整ってきたと思う。学校図書館を落ち着いた状態を保つという使命もある。多様な児童の興味関心や不読児への対応、授業者のねらいに沿った学習支援など多岐にわたってきている。こうなると学校司書1人ではとても抱えきれないような活動になっている。今後はこういうことが課題になってくるかと思う。

―コーディネーター
 学校司書は一人では足りない。実情にあっていない現状もある。フロアーからも意見や感想をどうぞ。

―土井
 内田洋行で学校図書館のアドバイスをしている。中学校では分散配架が多く、図書委員会が学級文庫の入替本などを考えるなどして活動をしている。それゆえ生徒が自分で選んでない資料が置かれていることが多い。司書がいない日はシステムの安全のために図書館には鍵がかかっている。司書が常時いるような環境であってほしい。職業調べや修学旅行調べでは利用されているが、学校図書館はそれだけの役割ではない。3年間を見通したプログラムが作れたらよいのにと思う。

―コーディネーター
 常時開館が普通になってほしいということですね。

―三石
 小学校では、司書教諭は学級担任をもちながらの司書教諭の仕事をしている。これでは学校図書館を利活用する活動をすることはたいへん厳しい。年間計画の中に教科指導と学校図書館、司書教諭の役割などを位置づけることによって司書教諭が代わってもやっていけるようになると思う。
 図書館ボランティアさんに協力してもらうなど、そういった工夫をして学校図書館活用の推進を図るのも仕方がない。

―斎藤
 千葉県の高校司書。荒川区の指針が素晴らしい。学習系統表は荒川区全体で同じようなものを作成されているのか。教科横断的にとなるとオリエンテーションに始まって、卒業までにどういう指導をするかだろう。3年間を通して計画することが大事だろう。著作権のことなど、司書教諭はこういうことにも関わって欲しいということを示して欲しい。

―髙橋
 第一日暮里小学校の例を載せているが、各学校において作成して欲しいということで掲載している。単元ごとにどんな教員でも使いこなせるような学習系統表を作成し、学校図書館を利活用できるようにしたい。

―堀川
 1983年には指導計画表があった。文科省から現在は出ていないのが残念である。札幌のある先生はどういう単元でどういう力をつけたいかというアンケートをとって、一覧表を作成したという。工夫はできると思う。

―村田
 大阪の元中学校国語教諭で現在は、大学の教員をしている。全国の学校図書館になぜパソコンが導入されていかないのかを知りたい。全国の学校図書館がメディアセンターにはいつなるのかを聞きたい。校長になるための試験に図書館に関する問題があるのかどうか、現場の校長はどうしたら活性化するのかについて尋ねたい。

―堀川
 コンピュータがどうして入らないのかは予算的なものが関連しているのではないか。1969年にアメリカでメディアという言い方がされていた。メディアというのは情報を伝える媒体でもある。したがって、現在の学校図書館はすでにメディアセンターといってもよいと思う。

―高橋
 校長面接試験で学校図書館のことについて聞かれたという話は今までに聞いたことがない。指導主事や校長研修などで理解を深めたい。

―藤田
 学校支援の活動を三つの自治体でしてきた。電算化について神奈川県の大和市は市長の方針もあって3か月という短期間でパソコンを導入した。多くの自治体は電算化の費用が多額になるという思いが強く、なかなか予算化されない。システムがもっと安くなることが望まれる。
 また、管理職の研修会で図書館の研修を行うと理解が早いことを体験した。学校司書の養成や研修だけでなく、司書教諭の研修や研究をしっかり実施することが重要だ。

―小川
 学校図書館で授業をすることを広めている。昨日の新聞に掲載された一年生の読書感想文の中に、「すぐに先生から図鑑を借りて」「もっとダンゴ虫を知りたくなった」という文があった。こういう児童が育ってほしいと思う。

―相澤
 組織的、計画的にすることが重要。今ある環境で何ができるかを考えて、組織や計画を考えていき、自分の学校に取り入れていく。荒川区では月に1、2回、研修会があり横のつながりがある。こういう研修が重要と思う。また、時には司書教諭と学校司書の合同研修会もあり、大変助けられている。

―高橋
 条件の整備が大切。荒川区では司書教諭と学校司書の打合せの時間がある。
 教員は、放課後の時間帯に打ち合わせをとる時間がもてるが、学校司書は時間外勤務となるので難しい。
 校長から学校図書館を活用してどのような授業をしているかを聞かれた教員がいる。そうなると図書館を使う教職員も増えるだろう。

―堀川
 松江市では司書教諭が活動時間の確保のために持ち時数について、時間軽減の交渉をしている。また、図書館担当者が工夫して、教員全員を巻き込むことが大切と思う。「司書教諭の何々先生」とか「学校司書の誰々さん」と呼ぶようにして、少しでも図書館担当者の認識を高めるようにしている人もいる。

―コーディネーター
 本日、発達障害児等の話はなされなかったが、今回の報告書では「特別支援学校における司書教諭の配置の充実」についても言及している。報告書の趣旨を受けて学校図書館が活性化するスタートラインになっていけばよいかと思う。
 御登壇いただいた4人の皆様に感謝する。

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